パンや焼き菓子の原材料表示欄にショートニングという表記があるのをよく見かけます。
ただ、一般的には馴染みのない言葉なので、そもそも「ショートニングって何??」と思う人も多いかもしれませんし、知っていたとしてもパンなどに使う危険な油と認識しているかもしれません。
そこでこの記事では、ショートニングとはどういったもので、なぜ危険だと思われているのかについて詳しく解説していきたいと思います。
目次
ショートニングとは何?
ショートニングは、加工油脂の一種です。
植物油などを原料に常温でも固形状を保つ性質を持つ油脂に加工しています。
19世紀末にアメリカでラードの代用品として開発されました。
水分や乳成分をまったく含んでいないという点がバターやマーガリンと大きく異なる油脂で、純度の高い油脂だと言えるでしょう。
ショートニングの特性
油脂の調理性のひとつに、「ショートニング性」というものがあります。
ショートニングはこのショートニング性に優れていることから、その名が付きました。
ショートニング性とは、サクサクとした軽い口あたりに仕上げる性質のことです。
パンなどの製造工程では、小麦粉に水を加えて練ることで生地を作りますよね。
この時ショートニングを使うと、生地の中で薄く伸びて小麦粉をコーティングしてくれます。
すると、水と混ざり過ぎることがなくなり、生地のねちゃつきが起こりにくくなります。
パンや焼き菓子に使うと、焼きあがった製品がサックリとした食感に仕上がり、なおかつショートニング自体が無味無臭であるため味を邪魔しないという便利な油脂なのです。
ショートニングの製造工程
もともと原料として使っている植物油は液状ですが、ショートニングは固形状の油脂です。
そのため、植物油に水素を添加して脂肪酸の構造を変えるという製造工程を取っています。
このとき原料とする油脂は利用目的に合わせて選択できるので、ショートニングには利用目的に応じた多種類が存在します。
工業的に生産されるため品質のばらつきが起こりにくく、安価に作れる油脂はパンや焼き菓子など大量生産する食品には欠かせないものとなっています。
ショートニングが危険だと言われる理由は?
トランス脂肪酸の存在
ショートニングのように工業的に生産される油脂で行われる水素添加の工程は、「トランス脂肪酸」というものを作り出します。
このトランス脂肪酸の健康への影響というのが問題視されており、危険ではないかと懸念されているのです。
トランス脂肪酸とは「トランス型」という配置を持つ脂肪酸のことなのですが、自然界では「シス型」という構造のものが一般的で「トランス型」はごくわずかしか存在していません。
しかし工業的に水素添加を行うと、この「トランス型」が作られてしまいます。
トランス脂肪酸の過剰摂取は悪玉といわれるLDL-コレステロールを増加させ、心臓疾患のリスクを高めることで知られているので注意が必要ですね。
日本と各国の対応
トランス脂肪酸の危険性については、日本だけでなく世界各国で問題視されています。
そしてアメリカで使用に規制がかけられたり、カナダではトランス脂肪酸含量の表示を義務付けたりする動きがあります。
そのほかにも使用量に規制がある国や表示を義務付ける国が出てきています。
一方日本では、現在のところ使用量の規制や表示の義務化はなされていません。
なぜなら、すでに日本のメーカー各社がトランス脂肪酸量の減少に努めていたり、日本人の平均的な食生活では心疾患のリスクを上げるほどのトランス脂肪酸摂取量には至っていないからです。
しかしトランス脂肪酸への心配の声は未だに根強くありますし、中には食生活の乱れからトランス脂肪酸を過剰に摂取している人もいます。
なので、今後規制や表示の義務化に移行していく可能性は十分考えられますね。
まとめ
ショートニングとはラードの代用品として開発された加工油脂で、パンなどにサクサクした食感を与えてくれる便利なものです。
しかし製造工程で発生してしまうトランス脂肪酸によって危険と言われていることも事実。
現在の日本では世界の各国よりも危険性が薄いとは言うものの、やはりできるだけ取らないでおきたいと考える人も多くいます。
パンなどの購入時には、原材料表示欄で使用油脂を確認してみると良いでしょう。
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